平成27年度第12回卒業式式辞

 平成28年3月1日(火)、北日本や日本海側は大変な悪天候であろうと思われます。ここ福島県いわき市は、風はとても冷たいものの、暖かい陽光に包まれています。本日は、福島県立いわき総合高等学校第12期生の卒業式、231名が本校を巣立っていきました。先生方や友人、後輩と名残を惜しむ姿が、そこかしこに溢れています。

福島県立いわき総合高等学校  平成27年度 第12回卒業証書授与式 式

 ただいま、全国総合学科高等学校長協会賞を受賞した孫田優希さんを代表とする第12期生231名に卒業証書を授与いたしました。この記念の日に、福島県議会議員 安部泰男様はじめ、多数の御来賓の皆様のご臨席を賜り、いわき総合高等学校第12期生の前途を祝福していただけますこと、心より感謝申し上げます。
 栄えある卒業証書を手にされた生徒諸君、卒業、おめでとう。そして、第12期生の保護者の皆様に、心からお祝いを申し上げます。3年間、保護者の皆様からいただいた数々のご協力に対し、教職員を代表して感謝の意を表します。

  本校は、震災後、仮設校舎での学習を余儀なくされておりましたが、平成27年4月20日に北校舎が竣工し、新しい学び舎となりました。これに合わせて、保護者の皆様には、北校舎に冷房を設置していただきました。PTA・体育文化後援会・同窓会の皆様のご支援により購入された体育文化後援会バスの利用も始まり、教育環境は一段と良くなりました。その一方、南校舎の耐震改修、格技場の大規模改修等の大型工事が続いており、生徒の皆さん、保護者の皆様にはご不便をおかけしております。

さて、いわき総合12年目の今年、本校を牽引した第12期生と後に続く生徒諸君の活躍はめざましく、日頃の勉学は勿論のこと、生徒会活動、ボランティア活動、運動部や文化部・同好会の活動が活発に行われ、輝かしい1年となりました。全国大会・東北大会に進んだ演劇部や陸上部、琴部の皆さん、県大会で優勝したハンドボール部の皆さん、フラガールズ甲子園で優勝したアロヒ・ミノアカの皆さんなど、上位大会での活躍が光った年でした。皆さんの活躍は学校の名誉を高め活気をもたらしてくれましたが、私が、同様にうれしいことは、多くの生徒諸君が、それぞれの舞台で全力で高校生活を楽しみ、関係者や保護者の皆様に感謝する気持ちを言葉で表現し、さらにはボランティア活動に一生懸命取り組んでいることです。まさに、「学びつつ表現する学校」の名に恥じない皆さんの姿でした。
 第12期生の活躍や資格取得の取り組み、学校生活の一端はお手元の表彰者一覧と皆勤賞・精勤賞一覧にございますが、私は毎年、学びと表現の集大成である課題研究の発表者をこの場で紹介しております。今年の研究発表会は、12月12日(土)に開催され、鈴木卓巳君、北郷未知さん、瀨谷笑加さん、そして高萩彩乃さんの4名が、各系列を代表して研究成果を発表し大きな拍手を受けました。テーマは救急救命からデッサン、コミュニケーション、福祉と多岐にわたり、本校の多様な学びと生徒諸君のレベルの高い表現力を明らかにしてくれました。

 総合学科である本校の特色は、キャリア教育とコミュニケーション教育にあります。それらを実現するために、まず、6つの系列に分類されている多種多様な授業がありました。人文科学や自然科学はもとより、本校の特長である芸術やスポーツ、生活福祉や情報の科目により、専門的な教育を実現しています。皆さんが自ら選択して学んだことが、皆さんの人生に生きて働くものと期待しています。卒業発表会や校内文化発表会等で舞台に上がる生徒も多い。プロムナード・コンサート等も含めて、全体としてスケルツォ的な面白さを醸し出しています。カリキュラムも生徒諸君も多様で、その多様さを認めあう雰囲気がとても良い。このような教育は、本校の教員ばかりではとても実現できません。大学の先生方やそれぞれの道のプロフェショナルな指導者、学校外部の各種団体の皆様の参画によるところが非常に大きく、心より感謝しています。このようなことにより、就職から進学までの多様な進路目標が実現しており、本校からの情報発信を楽しみにしてくれているサポーターも多いのです。
 多様性があり、多様性を認め合う社会は、風通しも良く、様々な困難をも乗り越えるしなやかな強靱さを持ちます。大学や専門学校に進学し又は就職して、皆さんは、新しい人々の集団の中に入ってゆくわけですが、自らの輝きは、周りの人々の異なる色合いとの共存の中で一層その輝きを増すことを理解しておいてください。そういう理解は、皆さん1人1人を幸せにするとともに、周りの人々を幸せにすることにもつながります。皆さんが学んで獲得した知性は、そのような方向でこそ生きるのです。

 東日本大震災と原子力発電所事故から5年の歳月が流れようとしています。諸君の中には、希有な体験を経て、葛藤しながら成長してきた仲間も多い。福島県は、未だ事故からの傷が癒えず、懸命の努力にもかかわらず、多くの町はその将来が見通せない。そのような経験をした皆さんだからこそ、地域と日本と世界に目を向け、貧困、エネルギー、教育、民族間の紛争などの本質を理解する努力をし続けてほしい。自分と自分のまわりの自由を尊重し、ローカルに行動し、しかし、視線は常に世界とその未来に向けてください。いわき総合高校も、皆さんがプライドを持って本校を語り続けられるように、前進してまいります。

 さて、これから皆さんは、クラスの仲間や部活動の仲間、お世話になった先生方に別れを告げ、社会への一歩を踏み出します。どのような出立の時でも、始めの一歩は大切でありましょう。昇降口を出るとき、又は校門を出るとき、力強い、大きな一歩を踏み出しましょう。皆さんには、それができる意志があり、その勇気があり、その力が備わっているはずです。
皆さんの前途を心から祝します。
   平成28年3月1日
                                                      福島県立いわき総合高等学校長 吉田豊彦