カテゴリ:第21代 目黒 憲校長
第9期生卒業証書授与式式辞 平成25年3月1日
本校ホームページにアクセスいただきましてありがとうございました。
去る、3月1日に平成24年度 第9回 福島県立いわき総合高等学校の卒業証書授与式を行いました。その時の式辞を掲載します。
3年次生のみなさん、卒業おめでとう。ただいま、236名のみなさんに卒業証書を授与し、いわき総合高等学校、総合学科の全日制課程の修了を認定しました。
湯ノ岳から吹き下ろす風にも春の兆しを感じる今日このごろ、解体する北校舎には、
皆さんの卒業を祝うかのように満開の桜並木が描かれています。
このよき日に、福島県議会議員 安部泰男様をはじめ、ご来賓の皆様方のご臨席を賜り、平成24年度 第9回 福島県立いわき総合高等学校の卒業証書授与式を挙行できますことは、まことに喜ばしい限りであります。
東日本大震災により被害を受けた皆様には、大変なご苦労を乗り越え、この日を迎えられたことと思います。また、お子様の成長を願い、深い愛情を持って、育んでこられましたご家族の皆様におかれましては、感慨もひとしおかと、ご推察申し上げます。これまでの間、本校のために多大なご支援、ご協力をいただきましたこと、全教職員を代表いたしましてここにあらためて感謝申しあげます。ありがとうございました。
そして、これまで、多くの示唆をいただきました関係機関及び地域の皆様方に対し、敬意と感謝の意を表します。
さて、あの東日本大震災からまもなく2年が経とうとしています。本日卒業する第九期生が2年生となる直前でした。当時の学校生活は、南校舎へ一時避難し、その後、体育館を間仕切った教室での授業が7月まで続きました。劣悪な学習環境の中、君たちは、勉強に部活動に精一杯頑張りました。毎日の生活が不安、家族が心配、学習環境も劣悪という逆境の中、君たちは、1年次に設定した将来への目標に向け、迷うことなく勉学に励み、進路の目標を達成することができました。
このような中、君たちは、先輩を支え、後輩をまとめ、校内の活動を推進してくれました。君たちは、体育館、校舎などの使用が制限される中、毎日部活動に励み、東北大会や県大会等に参加・出場し、各種大会で優秀な成績をあげました。そして君たちは、被災に負けない本校生の「姿と力」を示し、さらに新しい本校の伝統を築いてくれました。君たちの築いたこの伝統は、来年度いわき総合高校10周年として結実することとなります。
さて、昨年の3月11日、佐藤知事による「ふくしま宣言」が全世界に向け発信されました。一部読み上げます。
「地震・津波という自然災害に始まり、原子力災害さらには風評被害、人類がこれまで経験したことのない、このような多重の災害が、なぜ起きてしまったのか、私たちはしっかりと考えなければなりません。」「自然の脅威に対する十分な備えができていたか」「科学技術の力を過大に評価していなかったか」「原子力を扱うことの難しさと正面から向き合ってきただろうか・・」、これらの問いの中に、未来への大切な教訓があるはずです。
総合学科で学んだ君たちは、まさにこの宣言の推進者であります。なぜなら、1年次で必履修科目を学び、2年次では専門性の基礎作り、3年次では、発展科目により、専門性を高めました。さらに課題研究を通して、課題を設定し、その解決を図る力を培ってきたからです。「自然災害・科学技術・原子力・社会づくり」をキーワードにしたこれらの「問い」の解決には、「今、ここで何が課題か」、そして「どのように解決するのか」という判断が要求されます。今まさに、選択した科目での主体的な学びと課題研究の成果が実践される時です。現実社会における課題は見えにくいものですが、身近に課題を求め続け、そして課題解決のために行動を起こしてください。多くの人に出会い、自分を変革し、地域の人と交流し、地域社会の担い手となることを期待しています。
結びになりますが、卒業する第9期生の健康と幸多い前途を祈念し、いわき総合高等学校のさらなる発展と飛躍をご参会の皆様にお誓いし、式辞といたします。
平成25年3月1日 福島県立いわき総合高等学校長 目黒 憲
「世界を広げる」 平成24年12月26日
本校ホームページにアクセスいただきましてありがとうございます。
本校は東日本大震災により、北校舎(生徒教室・調理実習室・介護実習室)が使用不能となり、昨年8月末からグラウンドに設置した仮設校舎等で授業を実施しています。はじめに、今後の校舎改築等について、お知らせします。
7月の被災度区分判定を受け、北校舎は改築と決定しました。何度かの県関係部局との協議を経て、解体工事が平成25年3月から始まり、建設工事は、平成25年7月~平成26年11月上旬というスケジュールが提示されました。現在は、仮設倉庫の設置工事がグラウンド北側で行われています。同時進行で本校舎では、1月から、調理・介護実習室改修工事、具体的には、南校舎会議室を調理実習室に改修、同窓会館に介護設備を設置する工事が始まります。したがいまして4月からは、学習指導要領改訂に伴う新教育課程が本校施設内にて実施できることになります。保護者の皆様には大変ご心配をおかけしました。
さて、今年も総合学科恒例の研究発表会・教育文化講演会が12月15日(土)に開催されました。教育講演会は、アクアマリンふくしまの中野康元(なかのやすし)氏と岩田雅光(いわたまさみつ)氏による「アクアマリンふくしまにおける震災からの復興とグリーンアイプロジェクト(シーラカンスの調査研究)の取り組みについて」でした。講演後、「なぜ、アクアマリンでシーラカンス研究なんだろうか?」について、岩田氏から興味深いお話を伺いました。シーラカンスの研究は、アクアマリンの設置と大いに関係があるとのこと。いわきに設置するので、いわきならではの水族館にしたい、日本に一つしかない水族館にしたいとの想いがあった。そこで、いわき=化石(スズキフタバリュウ・石炭化石館)というイメージから、進化を取り上げる日本で唯一の水族館が誕生したとのこと。開設当初からシーラカンスの研究を続け、今では、世界的レベルの研究となっているのだそうです。さらに、館長の安部義孝さんは、以前務めていた上野動物園で展示に携わった時、シーラカンスについて知りたいと思っていたこと。岩田さんも、以前務めていた読売ランドで、日本で始めてシーラカンスの標本を展示した経験があることも関係しているようです。
続いて、研究発表会、テーマ『世界を広げる』では、4人の発表がありました。3年6組の亀岡菜摘さんのテーマは、『日本の食料自給率』についてで、「TVでフードアクション日本について知り、もっと知りたい」という気持ち。3年1組の高橋宏和さんのテーマは、『Good-byeストレス~呼吸法を用いたリラックス法~』についてで、「身の回りはストレスであふれているなんとかしたい、心のコントロールを知りたい」という気持ち。3年5組の小野夏子さんのテーマは、『陸上競技における試合で勝つためのトレーニング』についてで、「中高6年間取り組んでいる部活動の成果が出ない、なんとかしたい」という気持ち。3年4組の廣瀬玲菜さんのテーマは、『個展を開くためのイラスト制作』についてで、「イラスト制作していて、色彩について知りたい、追求したい」という気持ち。各人の「知りたい」という想いや課題意識が1年間の研究を支え、見事なプレゼンテーションとなりました。奇しくも、シーラカンスの調査研究に携わっている、安部館長と岩田さんが、シーラカンスのことを「知りたい。知りたいとずーっと思っていた。」ことを知り、本校の課題研究に取り組んだ生徒が世界的レベルの研究に進んでいくことを期待する一日でした。
校長 目黒 憲
仮設校舎での1年 平成24年7月27日
本校ホームページにアクセスいただいきましてありがとうございます。
3.11東日本大震災の影響で、昨年は8月に人事異動があり、また、8月24日に校庭に仮設校舎が設置され、まもなく1年となります。被災あるいは原発事故で、いまだに避難を余儀なくされている方々には、心よりお見舞い申しあげます。
7月20日の終業集会では、「1年前のことを覚えていますか」と生徒に問いかけました。体育館を間仕切りにした教室で生活していたこと、学校行事や部活動が計画通りに実施できなかったことなどを思い出してもらいました。現在は、仮設校舎とはいえエアコンが設置された教室で快適に授業に取り組んでいます。
さて、新年度になり4ヶ月が経ちました。この間の生徒の活躍や課題について振り返ってみます。
各種大会では、高校体育大会・総合体育大会・野球選手権大会そして各コンクールの地区予選会など、生徒たちは日頃の練習の成果を発揮してくれました。特に、印象に残ったことに、大会前にコートの復旧工事が入ったテニス部、大会直前にインフルエンザが流行したバスケットボール部、5月20日に「創造的復興教育フォーラム」(文科省委託事業)の一環として文部科学省の講堂で、震災と原発事故をテーマにした創作劇「ファイナルファンタジーフォー3.11」を公演した演劇部のことがあげられます。毎日の練習とは条件などが変わったことから、それぞれに練習計画や練習方法を工夫し、できることに精一杯取り組み、よく頑張りました。
年次ごとに振り返ってみます。
1年次では、遠距離通学生も多い中、登下校の時間にあわせた生活習慣が確立しました。また、新しいクラスメイトとの関係づくりも、概ね確立したようです。5月~7月のコミュニケーションワークショップにより、ゲームの課題をクラス全員で共有し、相互に理解を深めつつ、わかり合うことができたようです。講師の先生からも各クラスとも成長があったとの評価をいただきました。一大イベントは、科目選択です。「自己理解」と「進路」について、とことん追求しましたした。上級生の授業見学を行い、シラバスを研究し、科目選択をしました。相当悩んだことだと思います。悩んで悩んで自ら決定したその過程は、これからの学習や生活に大きく影響してきます。「自分で決めたことは自分で責任をとる。」という本校生の基本姿勢が身に付きました。今後は、進路希望をより明確にするために、「上級学校理解」と「職業理解」に取り組むこととになります。
2年次は、1年前、入学直後から年次6クラスが揃わない状態で7月まで過ごしました。そのような経験をしながら現在まで長欠者を一人もださずにこの7月を迎えました。これもクラスの団結・年次の団結があったからだと思います。特に、昨年内町小学校で生活していた3組が球技大会で全校総合3位になったことは、大変喜ばしいことです。また、2年次の大きな成果は、進路目標を明確にした生徒が多く出てきたこと、さらに校内での学習に取り組む積極的な姿勢が見られてきたことです。受験を制するコツは、クラスや年次で学習に取り組むことだといわれています。さらに多くの生徒が団体戦に加わることを期待しています。部活動では、3年次生の引退後、2年次生がリーダーとなって活動しています。1年次生に対し先輩として、技術指導はもとより総合学科での学びや様々な悩みの相談にのっています。本校の歴史は、3年次生から2年次生そして1年次生へ確実に繋がっています。
3年次は、まさに求人活動のまっただ中です。求人票が公開され、希望職種・会社の検討と会社見学、保護者をまじえ三者面談を行い、いよいよ就職活動がスタートしました。顔つきが変わり、生活が変わり、それぞれの目標に向かい就職活動が充実してきました。また、過日、ある専門学校のAO入試の手続きの書類が回ってきました。大学等の試験もスタートしたことを実感しました。進学の団体戦が始まり、互いに刺激し合い学んでいます。「3年間の学びの成果」と「やりたい仕事や勉強」を確認し、具体的に準備に入ったようです。保護者もみなさまからの応援もよろしくお願いします。
それぞれの年次で、夏季休業前までの課題を概ね克服していることが確認でき、安心しました。夏季休業後に、生徒全員が元気に登校することを願っています。
校長 目黒 憲
校是「個性 自律 創造」 平成24年4月13日
本校ホームページにアクセスいただきありがとうございます。
4月10日に平成24年度入学式を挙行し、新たに11期生240名を迎えました。本校は、来年度が10周年となる若い学校であります。しかし、その歴史は大正三年開校の「内郷村立農業補習学校」までさかのぼります。昭和二十三年の学校改革により、前身の「福島県立内郷高等学校」となり、平成十六年の校名変更まで、内郷高校56年の歴史と伝統を引き継いでいる学校であります。
本校の特色と生徒が本校でやるべき事は、本校の校是に示してありますので紹介します。
それは、「個性 自律 創造」です。「個性」とは、自己理解と自分像づくりのことです。本校では、6つの系列を設け、100を超える選択科目の中から、一人ひとりの興味・関心や進路の目標に応じて自分で科目を選択することができます。つまり、生徒は、自分自身を理解し、理想の自分像や目標を作り、その目標達成のために科目を選び、責任をもって学習を継続することにより個性を磨いていくことになります。
次に「自律」ですが、自分で決めたことに責任を持ち、その達成のために、規律やルールを決め、計画を立て、自らを規制し行動していくということです。
最後に「創造」です。理想の自分像や目標は無限です。生徒は、なりたい自分のイメージから人生の目標を設定し、総合学科ならではの「学び」を最大限に生かし、力を蓄えていきます。そして、将来、誰もやらなかったことに挑戦したり、価値ある新しい物を作り出していくという期待が込められた言葉です。まさに、これからの福島の復興や未来創造の担い手となることを願った言葉です。
4月9日の始業式では、校是「個性 自律 創造」について話しをし、新年度のスタートを切りました。10日の入学式でも同様に式辞の骨子とし、新入生に本校での生活の決意を促しました。年度末の人事異動で定年退職者1名、転出者9名を送り出しましたが、4月2日には、新たに9名の教職員を迎えました。その際、学校経営・運営ビジョンに「『総合学科の特色を生かした教育の推進』、開校10周年を節目に総合学科の更なる充実を図り、生徒の個性を尊重した教育活動を教職員が一致協力して展開します。」と明示し、今年度の教育活動の取り組みを確認したところです。
残念なことに被災が大きい北校舎は、建て替えの可能性が高く、仮設校舎での生活が今しばらく継続することになりそうです。本校を含め福島県は、復興が緒に就ついたばかりです。これからの復興の道のりを歩んでいくためには、学校・家庭・地域が一体となった教育活動を実践していかなければなりません。関係各位の力強いご支援を切に願うものであります。
平成24年4月13日 いわき総合高等学校
校長 目黒 憲
「ふくしま宣言の推進者としての学び」 平成24年3月19日
「ふくしま宣言の推進者としての学び」
本校ホームページにアクセスいただきありがとうございました。
平成23年度の終業式を迎えました。今年度は、被災地・被災校である私たちにとって、人生のなかでも忘れることのできないつらい・きびしい1年として記憶に残ることと思います。東日本大震災は、地域や私たちの生活を根こそぎ奪い、多くの被害をもたらしました。本校生も家屋が全壊または半壊した生徒が41名、転出した生徒が16名・転入した生徒が22名います。そのような中、亡くなった生徒や保護者がいなかったことだけが幸いでした。震災・津波に加え原発事故も発生し、現在も避難・移住生活をされている人が多くいます。あらためてお見舞い申し上げます。
震災から1年が経ち、3月11日に政府主催復興追悼式では、野田首相が原発事故に触れ「福島を必ずや再生させる」と誓いました。
また、本県では福島市で「3・11ふくしま復興の誓い2012」が開催され、佐藤知事により、「ふくしま宣言」が全世界に向け発表されました。一部抜粋して掲載します。
「地震・津波という自然災害に始まり、原子力災害さらには風評被害、人類がこれまで経験したことのない、このような多重災害が、なぜ起きてしまったのか、私たちはしっかりと考えなければなりません。
「自然の脅威に対する十分な備えができていたか。」「科学技術の力を課題に評価していなかったか。」「原子力を扱うことの難しさと正面から向き合ってきただろうか。」これらの問いの中に、未来への大切な教訓があるはずです。
私たちは、科学技術の力を過信することなく、自然の持つ力の大きさをもう一度しっかりと心に刻み、全ての人が安心して暮らせる社会づくりを進めていきます。
そして、二度とこのようなことが起きないよう、県内の原子力発電所を全て廃炉とするよう求めながら、再生可能エネルギーを推進し、原子力に頼らずに、発展し続けていくことができる社会を目指します。
このように佐藤知事が宣言しましたが、推進の主体者は、「私たち」となっています。知事が宣言し、つまり県の行政が中心となり進める。しかし、県の行政だけではできない。市町村の行政も民間の力も地域の力も、そして何より、未来を担う若い力、これからの社会を創っていく若い力、被災者である私たち、なんとかしたいと切実に願う当事者である被災地の若い力が必要であると訴えているのだと感じました。
現在の本校生一人ひとりの力は小さく・弱いかもしれない。しかし、社会を変えていく大きな力を秘めている。高校時代にできることをしっかりやり、これからのふくしまの復興や未来の社会を創造しなければなりません。そこで、本校生が今やらなければならないことは、何か、考えてみました。
それは、本校総合学科ならではの『学び』を最大限に生かし、力を蓄えることです。
新2年次生では、総合選択科目の基礎科目による専門性の基礎作りをしっかりと行い。新3年次生では、総合選択科目の発展科目により、専門性を高めることです。さらに、課題研究を通して、総合学科ならではの「学び」を追求しなければなりません。それぞれの興味・関心により、課題を設定し研究に着手することになりますが、その際に、「ふくしま宣言」にもあったように、『自然・科学技術・原子力・社会づくり』をキーワードに研究を進めることを期待するものです。そして「ふくしま宣言」の推進者となることを願うものです。ふくしまの復興、未来社会の創造に貢献できる力を蓄え、社会に出したいと願っています。そのために学校では、必要な「課題設定力」と「課題解決力」を身に着けることができる研究や学習を進めていきます。「全ての人が安心して暮らせる社会」「発展し続けていくことのできる社会」づくりの中心となることができるよう、上級年次での「総合学科ならではの『学び』」を計画し、新年度の準備をしているところです。
平成24年3月19日 いわき総合高等学校
校長 目黒 憲
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