2012年3月の記事一覧

「ふくしま宣言の推進者としての学び」 平成24年3月19日

「ふくしま宣言の推進者としての学び」


  本校ホームページにアクセスいただきありがとうございました。
 平成23年度の終業式を迎えました。今年度は、被災地・被災校である私たちにとって、人生のなかでも忘れることのできないつらい・きびしい1年として記憶に残ることと思います。東日本大震災は、地域や私たちの生活を根こそぎ奪い、多くの被害をもたらしました。本校生も家屋が全壊または半壊した生徒が41名、転出した生徒が16名・転入した生徒が22名います。そのような中、亡くなった生徒や保護者がいなかったことだけが幸いでした。震災・津波に加え原発事故も発生し、現在も避難・移住生活をされている人が多くいます。あらためてお見舞い申し上げます。
 震災から1年が経ち、3月11日に政府主催復興追悼式では、野田首相が原発事故に触れ「福島を必ずや再生させる」と誓いました。
 また、本県では福島市で「3・11ふくしま復興の誓い2012」が開催され、佐藤知事により、「ふくしま宣言」が全世界に向け発表されました。一部抜粋して掲載します。

  「地震・津波という自然災害に始まり、原子力災害さらには風評被害、人類がこれまで経験したことのない、このような多重災害が、なぜ起きてしまったのか、私たちはしっかりと考えなければなりません。
  「自然の脅威に対する十分な備えができていたか。」「科学技術の力を課題に評価していなかったか。」「原子力を扱うことの難しさと正面から向き合ってきただろうか。」これらの問いの中に、未来への大切な教訓があるはずです。
 私たちは、科学技術の力を過信することなく、自然の持つ力の大きさをもう一度しっかりと心に刻み、全ての人が安心して暮らせる社会づくりを進めていきます。
 そして、二度とこのようなことが起きないよう、県内の原子力発電所を全て廃炉とするよう求めながら、再生可能エネルギーを推進し、原子力に頼らずに、発展し続けていくことができる社会を目指します。

  このように佐藤知事が宣言しましたが、推進の主体者は、「私たち」となっています。知事が宣言し、つまり県の行政が中心となり進める。しかし、県の行政だけではできない。市町村の行政も民間の力も地域の力も、そして何より、未来を担う若い力、これからの社会を創っていく若い力、被災者である私たち、なんとかしたいと切実に願う当事者である被災地の若い力が必要であると訴えているのだと感じました。
  現在の本校生一人ひとりの力は小さく・弱いかもしれない。しかし、社会を変えていく大きな力を秘めている。高校時代にできることをしっかりやり、これからのふくしまの復興や未来の社会を創造しなければなりません。そこで、本校生が今やらなければならないことは、何か、考えてみました。
それは、本校総合学科ならではの『学び』を最大限に生かし、力を蓄えることです。
  新2年次生では、総合選択科目の基礎科目による専門性の基礎作りをしっかりと行い。新3年次生では、総合選択科目の発展科目により、専門性を高めることです。さらに、課題研究を通して、総合学科ならではの「学び」を追求しなければなりません。それぞれの興味・関心により、課題を設定し研究に着手することになりますが、その際に、「ふくしま宣言」にもあったように、『自然・科学技術・原子力・社会づくり』をキーワードに研究を進めることを期待するものです。そして「ふくしま宣言」の推進者となることを願うものです。ふくしまの復興、未来社会の創造に貢献できる力を蓄え、社会に出したいと願っています。そのために学校では、必要な「課題設定力」と「課題解決力」を身に着けることができる研究や学習を進めていきます。「全ての人が安心して暮らせる社会」「発展し続けていくことのできる社会」づくりの中心となることができるよう、上級年次での「総合学科ならではの『学び』」を計画し、新年度の準備をしているところです。


平成24年3月19日 いわき総合高等学校
校長 目黒 憲

第8期生卒業証書授与式式辞 平成24年3月1日

持続可能な未来の構築

 本校ホームページにアクセスいただきましてありがとうございました。
  さる、3月1日に平成23年度 第8回 福島県立いわき総合高等学校の卒業証書授与式を行いました。その時の式辞を掲載します。

 本日ここに、福島県議会議員 安部泰男様をはじめとして、ご来賓の皆様方のご臨席を賜り、平成23三年度 第8回 福島県立いわき総合高等学校の卒業証書授与式を挙行できますことは、まことに喜ばしい限りであります。
 まず、この度の東日本大震災により被害を受けた皆様に心よりお見舞い申しあげます。また、本校教育活動へのご支援ご協力に対しまして厚く御礼申し上げます
 ただいま栄えある卒業証書を手にされた生徒諸君、卒業、おめでとうございます。
 また、お子様の成長を願い、深い愛情を持って、育んでこられましたご家族の皆様におかれましては、感慨もひとしおかと、ご推察申し上げます。これまでの間、本校のために多大なご支援、ご協力を賜りましたこと、全教職員に代わりましてここにあらためて感謝申しあげます。ありがとうございました。
そして、これまで、多くの示唆をいただきました関係機関及び地域の皆様方に対し、敬意と感謝の意を表します。ありがとうございました。
 さて、本校は、昨年4月11日の余震で被災しました。本日卒業する第8期生が新年度を迎えたばかりの時でした。4月下旬から南校舎へ一時避難して授業を行い、その後、体育館間仕切り教室で7月まで生活をしました。劣悪な学習環境の中、君たちは、勉強に部活動に精一杯頑張りました。毎日の生活が不安、家族が心配、学習環境も劣悪という逆境の中、学校へ、教室へ、部活動へ、諸君を駆り立てた「何か」確実に成長しました。
 このような中、3年生が学校の中心となり、校内の活動を推進してくれました。君たちは、体育館、校舎などの使用が制限される中、毎日部活動に励み、全国大会や東北大会等に参加・出場し、各種大会で優秀な成績をあげました。被災に負けない本校生の「姿と力」を示してくれました。新しい本校の伝統を築いてくれました。本当にありがとう。
 今、世界に目を向ければ、地球環境問題、貧困・格差問題、利潤追求に偏った経済問題などさまざまな課題解決に迫られ、君たちには「持続可能な未来の構築」が求められています。
 総合学科で学んだ諸君は、「産業社会と人間」「総合的な学習の時間」「課題研究」で培った「課題設定力」と「課題解決力」を活用し、これらの課題を解決していかなければなりません。
 諸君は、明日の世界を担う人たちです。私たちが残せた良いものを受け継ぎ、私たちが残してしまった過ちや負の遺産を乗り越えることができます。課題研究や毎日の活動を通して身に着けた「主体的な学び」を実践し、常に「疑問と驚き」の視点を持ち、これからも「知ること」に貪欲になってください。
 環境と社会と経済の問題は、つながりとかかわりがあります。そして世界的なひろがりと地方的な深まりがあります。今日・明日に答えは見つからないでしょう。就職する人、進学する人、進路は様々ですが、身近に課題を求め続け、探し続けてください。そして課題解決のために行動を起こしてください。身近な活動に参加してください。多くの人に出会い、自分を変革してください。地域の人と交流し、地域社会の担い手となってください。「持続可能な未来の構築」は君たちの双肩にかかっているのだから・・・。
 結びになりますが、卒業する第8期生の健康と幸多い前途を祈念し、いわき総合高等学校のさらなる発展と飛躍をご参会の皆様にお誓いし、式辞といたします。


平成24年3月1日 福島県立いわき総合高等学校 
校長 目黒 憲